Sumerian Six

  • Steam/GOG
  • 2024年9月3日

もちろんメカニクスなどの事実を比較することは必要だが、Sumerian Six というゲーム自体の良し悪しを Mimimi Games のゲームとの比較で評価するのは避けたほうがいいと思う。 ステルスに注目したリアルタイム・タクティクス(ステルス・ストラテジー)は、二歩ほど進んだらゼロに戻るということを実践してきた。しかし Mimimi Games はゼロに戻る前に身を引いた。その理由の一つとしてこのジャンルで予想される収益を挙げたが、もし Mimimi が4作目を作るとしたらどうなっただろう。それは多くのゲーマーの興味を惹くアクションだったかもしれないし、アクションアドベンチャーだったかもしれない。しかし Mimimi はそうなる前に身を引いた。 だから今はまだ、このジャンルのゲームに対して比較で良し悪しを評価することは避けたほうがいいと思う。必要なのはきっと、その歩みを再びゼロに戻さないようにすることだ。Mimimi Games の歩みを奇跡とするのではなく、それを再現可能なものとして進めてもらわないと困るのだから。 パブリッシャーに対して数字という説得力を提供できないジャンルには、ディベロッパーだけでなく、私たちゲーマーにも情熱が必要だ。

注意点として、発売日のバージョンにおけるゲームの進行に影響するバグを2つ挙げておく。 1つは建物や通路などの出入口に複数のキャラクターで同時に侵入すると、そのキャラクターたちを操作することができなくなる時がある。そうなると過去のセーブデータからやり直すことになる。3回ほど発生したが、具体的な条件は不明。 もう1つは、ディスラプターという敵側の装置に関するもの。この装置は特定の範囲内にいるキャラクターのスキルを使用できなくするが、装置を破壊すれば再び使用できるようになる。しかし、破壊してもスキルを使用できないままになってしまうことが度々ある。その場合は破壊する前のセーブデータからやり直すことになるが、クイックセーブの保存数は5つしかない。Mimimi Games のゲームをプレイしたことがあれば知っていると思うが、クイックセーブ5つというのはそれこそ10分ほどプレイすれば埋まってしまう。そのため、もしこのバグが発生していることに気づくのが遅れると、装置の破壊前のセーブを失ってしまい、ステージを最初からやり直すことになる。これはかなりきつい。念のため、ディスラプターの有効範囲内に入る前と破壊前の2つを手動でセーブしておいたほうがいいと思う。 ディスラプターのバグは何度もやり直さなければ回避できないこともある。その場合は、破壊するキャラクター以外を範囲外に移動させておくか、破壊するキャラクターを変えてみるとかすると大丈夫かもしれない。 Hotfix 1.0.2 の内容を見ると、ディスラプターのバグは修正されたと思える文章が書かれているが、その後も同じようなバグに遭遇したユーザーもいる。 Sumerian Six - HOTFIX 1.0.2 Steam掲示板 - Bug reports

ゲームプレイについては、まずプレイ時間は20時間以上になると思う。ステージ数は10あり、かなり広いマップになっているので、1つのステージに2時間で合計20時間くらいだと思う。 Sumerian Six はパズル的な難易度を採用しているステルス・ストラテジーだが、割と大雑把な戦術でも大丈夫だったりする。これは各キャラクターのスキルを楽しませることを前提とした難易度になっているということだと思う。 多くのスキルが安全な位置で行動できるようなものになっていて、誘い出し系のスキルはもちろんだが、離れた位置から敵の気絶状態を維持できるものもある。攻撃用のスキルについても、複数の敵に連鎖する遠距離攻撃、遠隔操作で起爆できる爆弾、敵を遠くに吹っ飛ばせる発射台などがある。さらには透明になって自由に動き回れるという、敵の視覚のメカニクスを完全に意味のないものにするものまである。ここまで揃っていると、敵に見つかるのは近接攻撃を仕掛けるときくらいだ。 そうした隠れることについての気軽さは、敵を排除するという意欲をプレイヤーに維持させることに貢献している。その体験は直接対峙するコンバットとは異なるとは思うが、魅力的なスキルたちを駆使して敵を倒していくそのゲームプレイには、"パズル的ではあるが、やはりタクティクス" と思わせるだけの説得力がある。

音楽はそれぞれのステージでアレンジされている。一部のステージでは環境音に注目してもらうためのサウンドスケープになっているが、基本的にはギター、ベース、ドラムにパーカッションというバンド的なサウンドだ。最終ステージではテクノ寄りのエレクトロニック・ミュージックが用意されている。 サウンドトラックとしてゲームの外で聞けば楽しめるはずだが、ストラテジーやタクティクスの劇伴としては少し強いかなと思う。特にドラムが良すぎて、戦術を考えてるつもりがいつの間にか聞き入ってしまっていることもあった。 もしかしたら音楽自体がコンセプトを持っているのだろうか。たぶん「Hotline Miami」以降だと思うが、ビデオゲームにおいて音楽が前面に出るのは珍しいことではないので、このゲームの音楽も何かしら意図があるのかもしれない。 何にしても、もし音楽が気になってゲームプレイに集中できないときは、設定で音量を下げてみてもいいかもしれない。

私は現在、このゲームをプレイするために必要な最低環境未満のパソコンを使用しているので、映像とパフォーマンスについては何とも言えない。低設定の30FPSでなんとかプレイは可能だったという状況だ。 私が見ていたのはスクリーンスペースのアンビエント・オクルージョンだと信じたいけれど、多分ダイレクト・ライトのみのシェイディングだと思う。そんな状況だったので映像について書けることはほぼないが、セル・シェイディングを採用したビビッドな映像であることだけは書いておく。それとセル・シェイディングは設定で無効にもできる。 パフォーマンスについては事実以外は何も書けない。Steamの掲示板でも公式Discordでもクラッシュについての報告が多数上がっていて、実際に私も一部のステージにおいてクラッシュに見舞われた。しかし私の場合はパソコンの性能不足の可能性がある。デモ版についてもクラッシュの報告がされているので、先にデモ版で確認したほうがいいと思う。 また、Steamストアに書いてある推奨環境は Intel Core i7-6950X と Geforce GTX 1080 で「40FPS」となっている。

ストーリーは勧善懲悪的で悪党は悪党。リアルタイム・タクティクスということもあり、各プロットはステージのクリア時と開始時の間に置かれているので落ち着いて楽しめる。ただ、主人公のシドについての出自がまったく語られず突然に彼の役割が判明するという点に不満はある。そして勧善懲悪的とはいっても、もう少し敵側についても語ってほしかったとも思う。

Sumerian Six の前にも Mimimi Games を思わせるリアルタイム・タクティクスは発売されている。「Red Glare」と「Stargate: Timekeepers」だ。ただ、どちらも日本語未対応ということもあってまだプレイはしていない。 Red Glare は個人での開発のようで、ユーザーレビューを見る限りでは "Glitchy" "Buggy" といった表現が使われているので、もしかしたら粗削りな感じなのかもしれない。また、AIに関する開示の中でローディング・スクリーンとメニュー・スクリーンでAIにより生成された画像を使用していると書かれている。しかし30時間とか50時間とかプレイしている人もいるので、ハマる人はハマるのかもしれない。 Stargate: Timekeepers については、同じくユーザーレビューを見ると、どうやら "Stargate" というタイトルからくる印象とゲームプレイの乖離が大きいらしい。また、ステルス・ストラテジーという点から見たサムズダウンもいくつかある。

私は Mimimi Games のステルス・ストラテジーをそれなりの時間をかけてプレイしてきたので、この Sumerian Six を公平に評価するのは難しい。メカニクスやシステムそしてバグといった事実を語ることはできるが、それについても現在の私のパソコンの性能不足は甚だしいし、何よりもこのゲームの開発中にレイオフが行われたこと 、そしてディベロッパーの "the Team is now considerably smaller than originally" という言葉が重すぎる。 Steam掲示板「Future dlcs and addons」