Battle Chasers: Nightwar

  • Steam/GOG/Nintendo Switch/PlayStation 4
  • 2017年10月3日/2018年10月4日/2018年6月6日

バルダーズ系、フォールアウト系、ディアブロ系、ローグライク。海外のRPGにも色々ありますが、ゲームの世界やバトルに没入して楽しんでいるとき、ふと疲れを感じることがあります。 強い武器を持つと重くなる、防御力を上げると移動距離が減る、火の魔法を使ったら仲間が火だるま。 前衛は前衛であり後衛は後衛である。役割を超えて行動することはパーティが全滅するということ。 楽勝と思ったザコ戦で、たった一度のデバフのミスで前衛がパタリと倒れる。 アイテムもっと欲しいけど品切れで買えなかったとき、疲れを感じゲームを終了します。 「週末にね、腰据えてね、うん」 そう思いながらも次の日もプレイして、やっぱり楽しいわ、と楽しさと疲れを繰り返します。

例えば、とある町で出会った人が「アイテムを手に入れてくれ、報酬は弾む」と。 プレイヤーは、その人物が "悪い人" であることを知っている。そのアイテムで "悪いこと" を実践すると理解している。アイテムを渡すか渡さないかをプレイヤーは考える。 報酬を手に入れるためアイテムを渡す。「流石だな、だがもう用はない」と会話は終わる。 その人物は目の前にいる。試しに剣を抜くとターゲットに指定できる。攻撃すれば殺害できる。"悪いこと" を止めることができるしアイテムも手に入る。 攻撃すると、その人物は恨みを言うわけでもなく倒れる。プレイヤーはアイテムを手に入れ装備する。そして感じる罪悪感。 攻撃せずに去ると、後日、お世話になった誰かが殺される。やはり感じる罪悪感。 ゲーム内のキャラクターの行動はプレイヤーの責任。結果がどうであったかに関係なくプレイヤーが責任を負う。 ゲームでも責任を取らなきゃいけないのかと思いながら、やっぱり楽しさと疲れを繰り返します。

RPGに疲れを感じたとき、JRPGへの思いがよぎります。 例えば、とある町で出会った人が「アイテムを手に入れてくれ、報酬は弾む」と。 プレイヤーは、その人物が "悪い人" であることを知っている。そのアイテムで "悪いこと" を実践すると理解している。そして、アイテムを渡さないとゲームが進行しないことも分かっている。 プレイヤーはアイテムを渡す。「流石だな、だがもう用はない」と会話は終わる。 そこに別の人物が登場し「そいつだ、そいつが親父を殺したんだ。それを渡しちゃいけないんだ」と叫ぶ。プレイヤーはそのことを分かっている。でも渡すしかないじゃんゲーム進まないんだから。 プレイヤーは戦うことになるのも分かっている。相手を倒しアイテムを取り返すと「これはオレが持っていても仕方がない、あんたらが使ってくれ」と渡される。プレイヤーは嬉々として装備する。 プレイヤーが責任を負うことなく登場人物を殺害し、プレイヤーが責任を負うことなくゲームを進めることができる。

RPGに疲れを感じたとき、JRPGがしたいと考えます。ステータスの割り振りとか覚えたスキルの特長とか細かいことを考えずにバトルしたい。デメリットなんかいらない、強くて硬くて速い最強キャラがいいんだ、気持ちよくゲームを進めたいんだ、でも気が向いたら仕組みキッチリ理解してやり込みたいんだ。 そう思ってゲームの情報を集めてみても、ほとんどは10年以上前のゲームになってしまいます。 そして "JRPGリスペクト" にたどり着きます。海外のゲームです。 Battle Chasers: Nightwar もJRPGという表現が紹介の中で使われます。

「あぁ、洋ゲーか……」 これが2~3時間ほどプレイしたときの正直な感想でした。"ダメージが3.75%アップ" とか "○○状態のとき追加で25のダメージ" とか細かな設定が示されています。攻撃やスキルの特徴を把握してタクティカルに進めないと楽しめない雰囲気を感じました。 そうじゃない、そうじゃないんだよ、と思いながらも気持ちを切り替えて楽しもうと決めました。 何度もスキルの説明などに目を通して装備の強化なども考えてプレイしていると、バトルでストレスを感じることが減ってきました。そして「あれ、JRPGだ」と感じる不思議。 基本は海外のRPGなんですけど、作り手側が想定しているであろう適正レベルとかゲームの進め方とかにハマると途端にJRPGのプレイ感になります。

JRPGのように、ゲームの進行に従っていれば、自然とキャラクターの育成やバトルを楽しめるようになるという感じではなく、プレイヤーが自分で、意図的に、JRPGのプレイ感にしていかないとダメという感じです。 そのためには、ある程度ですが、攻撃の特徴などを把握して装備の強化などをしていく必要があります。装備の強化などがゲームの進行に含まれているわけではないので、強化したいなら「よし強化するぞ」とゲームの進行から一旦離れて素材集めなどをします。サッとクリアしてからのやり込み的な感じではなく、ゲームの進行に合わせてやり込んでいくという感じです。 ゲームの進行に合わせてやり込んでいくことになるため、終盤とかになると自然とやり込んでいる状態の強さになります。ラスボス一撃とかもあります。特別やり込んだという感覚がなくてもそうなります。

JRPGとは逆なのかなと感じます。 JRPGは基本的に、ゲームの進行に従っていれば細かいことを気にしなくても楽しめる、やり込みたい場合は時間をかけて仕組みとかを把握して手ごたえのあるプレイを楽しめる。 Battle Chasers: Nightwar は基本的に、ゲームの進行に従うだけだとストレスを感じるようなバトルになる、でも仕組みとかを把握して時間をかけて強化などを楽しめばサクサクとバトルを進めることが出来る。やり込みながら進めていくことでJRPGっぽくなる。 どちらの場合も、ユーザーのプレイスタイルに違いがあっても楽しめるようになっているのですが、そのための調整の仕方が違うような気がします。

ゲームプレイですが、クリアまでの時間は40時間ほどかなと思います。じっくりとプレイすれば60時間くらいになるかもしれません。 攻撃やスキルの特徴を確認して、それらを気にしながら一戦一戦を真面目にこなす感じです。特にバフ・デバフの有用性とかは敵も味方も同じなので、パーティがデバフでズブズブな「ふざけんなよ」という涙目な状況になることもあります。 ダメージがやたらデカイ相手の行動順をひたすら遅らせるとか、HPが低い敵を先に攻撃してHPが高い敵は出血や毒でダメージを与えておくとかやってました。 どうにもならないってときは盾役が挑発し続けて防御ですが、それでも良く考えないと、回復をデバフによるダメージで相殺されてジリ貧なうえに相手にダメージ与えられていないなんてことになります。

ダンジョンに挑戦するときは難易度を選べるのですが、難易度による敵レベルの差は3くらいです。そのため、あとで挑戦したときにはどの難易度も簡単になってしまっていた、ということもありました。報酬もダンジョンの適正レベルに合わせたものなので、キャラクターのレベルが5くらい上がってから挑戦すると残念なことになってしまいます。 難易度を選択するときに、キャラクターの強さによって「ハード」とか「超イージー」とか目安が表示されるので、「ノーマル」か「ハード」の難易度を選ぶと手ごたえのあるプレイができます。

装備にもよるのですが、サクサクと進めるには相手のレベルに対して+3くらいは必要な感じです。相手のレベルに対して-1程度の差がある場合は全力で行くことになりますが大ダメージで全滅もあります。 レベル差がない場合でも、極端にダメージのデカイ攻撃を毎ターンしてくる敵もいて「おかしいだろ」とつぶやいてしまうこともあります。そのため、これはタクティクスか?と思えるほどザコ戦に時間をかけて戦うなんてこともありました。 ある程度ストーリーを進めるとレベル上げなどをしないとバトルが厳しくなってくるので、ダンジョン挑戦などで適正レベルに上げて装備の強化もするのがいいかなと思います。

とにかく戦ってレベル上げて素材集めて回復アイテムや装備を作成して特殊技などをバンバン使って大味に進めていく、そういうJRPGっぽいプレイも可能です。相手の大技に耐えることができれば勝ちみたいな感じです。 パーティのレベルが相手より1~2くらい高いダンジョンに挑戦して装備や素材を集めていれば、少し時間はかかりますがレベルも上がっていくので、次のエリアでのバトルもラクになります。 また、回復量やダメージを肩代わりしてくれるダメージシールドの強さが攻撃力で決まるため、速さや防御力を気にするより、攻撃力を上げて強いシールドを張って少ないターンでバトルを終わらせるほうがいい場合があります。即時発動できるバーストを使える状態でバトル開始すればさらに安定します。 矛盾している気がしますが、細かいルールを把握して楽しむ海外のRPGと細かいことを気にせずに楽しむJRPG、この感じが混ざり合っているという不思議なプレイ感覚です。

基本は海外のRPGだけど、ユーザーのプレイスタイルに違いがあっても楽しめるというJRPGっぽさ。それを、付け外しが自由なスキル、装備によるステータスアップ、そして難易度を選べるダンジョンによって実現できているかなと思います。 中盤でバトルが極端に厳しくなり「やっぱり装備の強化とかしないとダメかな」と思い、しっかりキャラクターの強化を考えてプレイしていたら終盤で急にサクサク進めることができるようになりました。難易度の調整がおかしいのかもしれないのですが、序盤から素材集めなどして強化しながらプレイしていたら中盤の楽しみ方も違っていたと思います。

好きなキャラクターをアレコレいじくり倒して色々な戦い方を試せるので、器用貧乏だったキャラを何かに特化したら豹変することもあります。 ノランというキャラが敵の行動速度を低下させる攻撃を使えるのですが、低下する量を増やせるスキルをつけると結構イジワルなことになります。 キャラクターを強化していくとギャリソンなんかは凄まじいダメージを与えるようになりますが、間違いなく難易度は崩壊します。 自分の場合はガリー、レッドモニカ、アルモンの3人でクリアしました。レッドモニカはクリティカルとデバフの組み合わせが凶悪で、最終的には毒などのデバフによるダメージにもクリティカルを発生させることができるようになります。さらにラブボムという最強バーストが全体デバフ攻撃で、毒・出血・炎上・防御力低下・速度低下という性能です。 たまに出てくる強いザコとかは、レッドモニカでデバフ、ガリーがシールド張ってチマチマとジャブで攻撃、アルモンが回復して守り勝つみたいな感じでした。

敵と味方の行動順が分かる仕組みなので、じっくり考えてバトルを攻略するのが好きな人向けだと思えます。ですが、特殊技やクリティカルで愉快に進めていくこともできます。その場合はレベル上げなどの手間もありますが、ダンジョン挑戦や生産などにより退屈せずにこなせる思います。 ただし、仕組みなどを把握して装備などの強化を楽しんでいると、キャラクターが強くなりすぎて "たたかうを連打するゲーム" になってしまうというジレンマもあります。クリア後のニューゲーム+は出だしから敵とのレベル差が3以上あるので、ヌルさを感じたらサッとクリアしてしまうのもいいかなと思います。

移動がDivinity: Original Sin 並にモッサリしています。バトルでのキャラクターのモーションもモッサリしていて全体的に遅く感じるので、バトルを楽しめないとストレスを感じるかもしれません。

クリア後は、通常モードかニューゲーム+かは関係なく「ボスとかを違うパーティで倒したいな、っていうかもう一回やろう」と思えました。 ガチガチに調整された難易度ではなく、細かいことは考えずにアレコレ楽しんでもいいし、常に先を考えてタクティカルに時間をかけて楽しんでもいい。 そしてデバフの強さに気付きデバフゲーと化す危険がある。敵も味方も皆で出血。 そんな感じのRPGです。

2018年6月6日にPlayStation 4、10月4日にNintendo Switchで日本版が発売されました。ダウンロード販売のみです。