Lumote: The Mastermote Chronicles
- Steam/GOG/Nintendo Switch/PlayStation 4/Xbox One
- 2022年4月21日/2022年5月12日/2022年4月20日
そのゲームが楽しいかどうかはプレイした本人が決めることだと思うから、個人的な感覚としてではなく一般的な感覚として「このゲームは楽しい」と断言することはそうそうない。 しかし、この Lumote: The Mastermote Chronicles についてはそれを書きたい。このゲームは楽しい。そして素晴らしい。
3Dのパズルゲームで、青く発光しているフニャフニャした生物 Lumote が主人公。 もとは2020年2月20日にリリースされた「Lumote」というゲームだが、いくつかのコンテンツを追加するアップデートと同時にタイトルが変更され「Lumote: The Mastermote Chronicles」となった。 赤と青という設定であることから、このゲームの紫は固有の波長を持つヴァイオレットではなく混合色のパープルであると考えることができる。赤と青の勢力が拮抗していると紫になるということなのだろう。 Mastermote の赤によって支配された世界でプレイヤーは Lumote を導き、青の勢力を取り戻し、最終的には真っ青の世界を作り出す。
ステージ制ではなく1つの広大なマップになっていて、カメラを動かせばすべて見渡せる。 ところどころにある花の形をした扉を開いて進んでいくのだが、扉を開くにはその花に供給されている光の色を赤から青に変える必要があり、そこがパズルとなっている。 マップには伸び縮みする植物や主人公を乗せて移動できる動物など様々な生物がいる。それらは供給される光の色によって振る舞いが変わるので、それぞれの特徴を上手く利用してパズルを解いていく。
ゲームプレイについては、まずプレイ時間は6~8時間ほどだと思うが、パズルに手間取ると10時間以上になるかもしれない。 ゲームを開始してすぐ、Lumote を動かすこと自体の気持ち好さに驚く。その操作感の良さが、パズルを解くことをアクションが邪魔しないという保証になり、プレイヤーはパズルを解くことに集中できる。そしてペタペタと歩き何事かを呟く姿を見ているうちに、その印象は不気味さから愛らしさへと変わる。 序盤は簡単だが中盤以降は長考が必要な難易度になる。しかし光に反応し振る舞いを変える生物たちが、面倒なはずの作業を楽しい観察の時間に変えてくれる。 とは言えやはりパズルゲームだから、いつまで続くのかという重圧のようなものを感じることはある。さらに、一続きの広大なマップでパズルを解き続けることに寂しさや心細さもある。しかしそれさえも、ときおり何事かを呟く Lumote と、やはり何事かを呟く生物たちの愛らしさが癒してくれる。彼らが何を思っているのか分かるはずもないが、少なくとも私は一人ではない。そしてどこまでも続くパズルは、彼らと触れ合える機会なのだ。
やがて疲れを感じ、何をするでもなくカメラを動かしていると、その映像の美しさに感動する。赤と青の光は、はっきりと分かるけれども、まるで目をつぶって頭の中で描いたかのようにどことなくぼんやりしている。 青い光の中には、これまで触れ合ってきた生物たちが佇んでいる。赤い光の中には、これから触れ合う生物たちが佇んでいる。青は Lumote の進んできた道であり、赤は Lumote が進むべき道なのだ。 パズルゲームをプレイして、カメラを動かし映像を眺めることを楽しむなんて想像すらしていなかった。
このゲームは "移動したものをその場所から移動させられない" という、いわゆる詰み状態になることがなく、配置や手順を間違えたとしても移動し直しすことができるようになっている。これにより初期状態に戻してリトライするという行為がほぼ無くなる。それが、ステージ制ではなく一続きのマップをであるということと非常に効果的に影響し合い、まるで長くつらい旅を続けているかのような、途切れることのない没入感を実現している。 その没入感は本当に凄まじく、30分以上はプレイしただろうと思っていたら2時間経っていたなんてこともあったほどだ。
Lumote でクリアすると次は Mastermote でプレイすることになる。そして Mastermote でクリアすると Lumote で始めからプレイできる。 Mastermote のパズルは Lumote とは異なり、パズルの数は Lumote の半分以下だ。しかし、狭い足場をジャンプで渡ったり、「この解き方で正しかったのだろうか」と戸惑ってしまうような解き方をする必要があるなど、非常に癖の強い難易度になっている。また、収集アイテムであるアーティファクトは Mastermote のパズルでは出現しない。 このゲームはステージを選択することができないため、取り逃したアーティファクトは Mastermote をクリアしてから Lumote で入手する必要がある。ただ、Mastermote クリア後の Lumote のパズルは最初のものと同じなので、面倒ではあるが、それほど時間はかからない。
Lumote: The Mastermote Chronicles。 光を与え、ときには遮り、そして光の勢力図を変えていく。そこには、プレイヤーがその世界の物事に干渉しているのだという手ごたえがある。そしてその映像の美しさとキャラクターの愛らしさは、それらが単なる記号ではなく、その世界に生きる何かなのだと感じさせることに成功している。 パズルを解くことに疲れ、ふとカメラを動かし見渡せば、これまで進んできた道が青く輝いている。随分と下りてきたものだ、スタート地点はどの辺だろうか。そんなことを考え眺めている時間はとても幸せで、まだまだ続く赤い光に挑む根気と勇気を蘇らせてくれる。本当に素晴らしいゲームだ。 それにしても Lumote は一体何と言っているのだろうか。とても気になる。