Terra Nil

  • Steam/GOG/Nintendo Switch
  • 2023年3月29日/2023年12月19日

荒れ地の再生を目指すというゲーム。シミュレーションのようなメカニクスを含んでいるがプレイ体験としてはパズルゲームに近い。 難易度は庭師、エコロジスト、環境エンジニアそしてカスタムの4つから選べる。難易度はオプションでいつでも変更可能。

4つの地域があり、単なる荒れ地であったり火山活動があったりとそれぞれ特徴が異なる。それらの地域で施設を駆使して自然を再生させる。 それぞれの地域での活動にははっきりとした目標が設定されていて、その目標を達成するとその地域はクリアとなる。そのためシミュレーションのようなメカニクスによるステージクリア型のパズルと考えたほうが良い。 マップは自動生成となっていて、同じ地域でもプレイするごとにマップが異なる。 一度4つの地域をすべてクリアすると平行世界というものがアンロックされ、それぞの地域に1つずつマップが追加される。この平行世界は難易度が高く難しい。

施設は始めからすべての種類を使用できるのではなく、自然の再生を進めるごとに増えていく。 それぞれの施設には設置できる場所に制限があり、設置する向きによって効果範囲が決まるといった施設もある。 施設を設置するには資源が必要になる。資源は自然を蘇らせた面積に応じた量を獲得するが、この資源は蘇らせたあと継続して入手できるのではなく、蘇らせたときのみ獲得できる。そのため、各施設ごとの有効範囲などを把握してできる限り無駄を減らしていかないと、資源が無くなってクリア不可能になってしまう。 また施設を設置する順番も重要で、例えば緑化をする場合は必ず先に毒素除去装置で土壌を肥沃にしてから灌水(かんすい)機で水を撒かなければならない。灌水のあとで毒素を除去してもその場所は緑化できないのでもう1つ灌水機を設置することになる。 これらのメカニクスからなる自然再生のシステムを、ある程度でもいいので、理解して効率よく施設を配置しなければならない。

ゲームプレイについては、まずプレイ時間はとりあえずのクリアが6時間ほどだと思う。クリア後の要素である平行世界も含めると10時間くらいになるかもしれない。 絵がとてもやわらかくて、それがゲームプレイに穏やかさをもたらしている。目標を達成するために悩んだりもするけれど、決して苦しいものにはならず最後まで穏やかだ。 各地域の終盤では必ず動物の生息地の発見に挑戦することになる。そしてこれがすごく楽しい。動物たちの出現条件は様々で、それは海のそばの草原であったり雪原に接した森だったりと結構難しいのだが、動物が出現したときは「いたいた」とマップを拡大して笑顔で眺めてしまう。 そこまで進めていれば資源にも余裕があるので、発見できないときは条件を満たすように作り直すこともできる。しかし私はそれをしなかったし、どうせなら始めからプレイしたいと、その理由が出来て嬉しいとさえ思った。 そしてクリア直前。このゲームにおいて私が最も好きな時間。最後は設置した施設をすべて回収しなければならないのだが、これは本当に素晴らしい設定だと思う。その自然は人の手によるものだが、しかし確かに存在しているのだから、あとは自然に任せるべきだと思わせてくれる。

最終ステージでは、衛星を打ち上げて各地域の植物をスキャンし植物の種子を保存する。そして種子の保存を完了すると打ち上げた衛星を回収することになるのだが、これもまた素晴らしい。きちんと衛星がパラシュートで降りてきてそれを回収するという流れになっている。降りてくる衛星を眺めている時間は「ああ、これで終わりなんだな」という実感を抱かせ、回収をためらってしまうほどに名残惜しいが、仕方がない。目的は達成したのだからお別れだ。 そして、惑星を脱出するときが来たとロケットを建造する設備を眺めると、小さなロボットたちが作業をこなしている。そういった描写はもしかしたら必要のないものなのかもしれないが、その細やかな気配りは、やはりビデオゲームのナラティブにおいて重要なものなんだと、私はそう信じている。 それらの映像に、自然の再生の進み具合によって滑らかに変化していく音楽が加わり、最後はせつなさのような感覚を得る。

すべての地域をクリアしたあとで平行世界がアンロックされるが、そのマップはとても難しい。これまで利用してきたメカニクスをしっかりと頭に叩き込んでおかないとクリア不可能だと勘違いしてしまうほどだ。というか実際に私は、自動生成のマップに関するバグだと思ってしまった。ネタバレになると思うので具体的には書かないが、目標を達成するために必要な「木」を作れなかったのだ。 それでSteamの掲示板を確認してみると同じように勘違いしていたユーザーによる投稿があり、それに対して他のユーザーが「それはバグではなくクリアも可能だ」と書いていた。そこには答えも書かれていたのだが、「ああ、そうだ、確かにそうだった」と大きくうなだれてしまった。このゲームはやはりパズルゲームだと思う。

Terra Nil。 草が生え草原になり、木々が生い茂り森となる。水辺では亀が泳ぎ、氷の上をペンギンが歩く。その映像は決して派手ではないが、しかしそれらを見るたびに、確実に私の胸の内に何かが積みあがっていくのが分かる。それは嬉しさや感動というよりも "やさしさ" という表現がぴったりで、私はそのやさしさでもって、蘇った草木や動物たちを眺めていた。 「Dorfromantic」はパズルのメカニクスでシミュレーションのようなシステムを形成したが、このゲームはシミュレーションのようなメカニクスでパズルのシステムを作った。"メカニクスという見た目" がシミュレーションなこのゲームを、パズルゲームだと気づかずにプレイする人もいるかもしれない。楽しめたのであればそんなことはどうでもいいけれど、でもプレイ中に何かしらの違和感を感じたなら、このゲームはパズルだという意識でプレイすれば変わると思う。そしてその先に、やさしさに満ちたナラティブとの出会いが待っている。