Smoke and Sacrifice
- Steam/Nintendo Switch
- 2018年5月31日/2019年5月30日
気になっているのに、しかも凄く気になっているのにプレイせずにいるゲームが時々あります。理由は色々で、今夢中になっているゲームがある、他の気になるゲームを優先しているなど。 Smoke and Scrifice を3~4時間ほどプレイして「あぁ、こういうゲームか」と理解できた瞬間、何故今までプレイしなかったのだろうと後悔しました。それは文句なしに素晴らしいとかではなく、自分の想像していたプレイ体験とは違っていたから。
Smoke and Sacrifice のことを勘違いしていました。それは単純な間違いだけど大きなミスでした。勘違いしたまま想像したプレイ体験は、実際のプレイ体験とは違うものになってしまいます。 モンスターを倒し素材を入手しアイテムをクラフトで作成する、ストーリーはクエスト方式で、その合間にサブクストをこなし装備を充実させていく。ここまでは想像の通りでした。間違っていたのは経験値により成長すると思っていたこと。 Smoke and Sacrifice はレベルアップによる成長はありません。特殊なスキルも使えません。モンスターを倒しストーリーを進める方法は、効果の高いアイテムや強い装備を作るか、効果の低いアイテムや武器を大量に作って乗り切るか、になります。
プレイする前は、クエストやクラフトを楽しんでいるうちにレベルが上がり強い装備をクラフトする必要もなくなってしまった、そういう感じになるだろうと思っていました。それを避けるために、1週目はサブクエストやクラフトはそこそこに、2週目は1週目の体験をもとにやり込んでいくという感じを想像していました。プレイしているうちにクラフトをすることが目的になり、クエストなどの他の要素はクラフトを楽しむための手段になるだろうと。あとはどういうプレイスタイルで楽しむか。 そんな感じで "プレイ体験を完全に想像できたつもりでいた" というのが Smoke and Sacrifice をプレイせずにいた理由の一つです。そして、それは完全に間違っていました。
はっきりとしたストーリーがあって主人公には目的があります。サバイバルやクラフト自体を目的として楽しむ体験にはならないと思います。悪い言いかたをすれば、サバイバルやクラフトの仕組みなどは物足りない(下手すると不満)ということになります。また、ストーリー進行のために "クラフトを強要される" と感じることがあるかもしれません。別に自分はそれを作りたくはない、好きにやらせて欲しいみたいな感じです。クラフトについては、あくまでもゲームの進行に従ったものになるので、その辺で好き嫌いが分かれてしまうかもしれません。 そのため、Steamストアにある説明の通り "narrative-driven RPG" として楽しむのがいいかなと思います。
戦うことで強くなるのではなく作ることで強くなる。作るためには戦う必要がある。より良いアイテムをつくるには、探索をしクエストをこなしレシピと素材を集める必要がある。 そして、アイテムは使えばなくなるし装備は壊れる。だからまた作る。作るには素材が必要だから探索する。そしてまた作る。 何故作るのか? それは、強さはアイテムの性能と数で決まるからだ 何故強くするのか? それは、強くなければ倒せない相手がいるからだ 何故倒すのか? それは、倒さなければ進めないからだ 何故進むのか? それは、一度は手放した我が子を、今度は救うためだ これが Smoke and Sacrifice のプレイ体験。 何をするのにもクラフトが必要になる。本当に何をするにも。そして、その先には目的の達成がある。 プレイしているうちに思う。このつらい、修行のようなクラフトは、自分の役目を果たすためだと。その先に、我が子がいるのだと。
ゲームプレイですが、プレイ時間は20~40時間くらいで幅があると思います。要領よくクラフトできれば20時間でも大丈夫かもしれません。 アイテムを作成して行けない場所へ行き、アイテムを作成してモンスターを倒し、そしてクリアを目指す、というものになります。そのためのシステムも一通り用意されていて、ファストトラベル、良く使うアイテムのショートカット、順番にアンロックされていく上位性能アイテムの作成、保管用のボックスなど。 経験値によるレベルアップがないので、キャラクターを強くするにはクラフトでアイテムを作成する必要があります。本当に何をするにもクラフトが必要です。 硬いものは硬いものを壊せるアイテム、掘るには掘るためのアイテムを使う。雪が積もっている場所は専用の靴を履く。それらをクラフトによって実現していきます。 どことなく単調ではあるのですが、単調すぎるものにならない工夫もされています。見た目の違いを楽しめる装備、不意に出くわす嫌らしいモンスター。装備による見た目の違いは地味に楽しめます。モンスターを気絶させてその間に乳を搾ったり、餌を与えて連れて回るなんてこともあります。 数時間ほどプレイしてゲームの大まかな仕組みを理解したあとは、黙々と、静かに、このゲームを楽しんでいました。
バトルはリアルタイムバトルで、少しですがアクションな操作も求められます。シンボルエンカウントなので面倒なら無視して進むことができます。 バトルをすることは素材を入手するためであり、つまりクラフトのためです。そしてクラフトは先に進むための手段だと考えることになると思います。 基本的にはシンプルなバトルですが、クラフトをいい加減に考えているとあっさり死亡します。難しいと感じたときは「このゲームはクラフトにより強くなるRPGだ」ということを意識するといいかなと思います。倒せないのなら強い武器とアイテムを作ります。クラフトをしっかりと実践し、同じモンスターに挑んだとき、クラフトの重要さを感じさせられます。 しかし、悲しいことに装備はすぐに壊れます。壊れる前に修理するか作り直すかです。 そして、セーブはセーブポイントでしかできないため、積極的にセーブをしておかないと「ここからか……」と後悔することになります。10分おきにセーブするくらいでも変じゃないです。
主人公は経験値で成長することもないし特殊な能力を使えるわけでもない。主人公を強くするのはただ一つ。それがクラフト。それが主人公の最大の武器。各要素の楽しみは、全てクラフトを中心に広がっていきます。 地味なゲームです。本当に。楽しさとか没入感とかも全体を通して一定です。クラフトしてクラフトして、そしてクラフトする。そのプレイ体験は間違いなくクラフトです。 爽快感とかそういったものはなくて、コツコツとクラフトし、コツコツと進めていくことになります。でも、その先にあるエンディングを見たときの感覚というのは、やっぱりその体験があったからこそだと思えます。
ときどき、楽しみかたとか進めかたとか、そういうのを導いてくれるゲームがしたいと思うときがあります。あれこれ自分で考えたり試したりするのは疲れると。そして、Smoke and Sacrifice は自分で楽しみかたを見つけていくタイプのゲームだと思っていました。でも実際にプレイしてみると、ストーリーがあって主人公の目的があって、ゲーム側はそれをプレイヤーに伝えて導いてくれるというものでした。 もちろん、クラフトを楽しめるかどうかは重要なことです。その体験がゲームの世界観などに影響すると思います。ですが、それをストーリーの進行に合わせて体験させてくれるので、仕組みを深く理解したりする必要はありませんでした。 ただ、全体としては上手く進ませてくれるのですが、細かい部分ではプレイしていて不親切と感じることもあります。そのため、ある程度ゲームのお約束みたいなものを把握している必要があるかもしれません。
クラフトによって探索エリアを広げ、クラフトによって依頼をこなす。全てはクラフトを中心に進む。でも、そのクラフトは手段であり、主人公の目的は我が子を救うためだということを忘れることはありませんでした。 自分が想像していたプレイ体験は間違っていたと気付いたとき、Smoke and Sacrifice は素晴らしく輝いていました。何故か、ときどき訪れる自分が好きなタイプのゲームに対する倦怠感みたいなものを消し去ってくれた気がします。 それって結局、ゲームって楽しいよねということを感じたのだと思います。たぶんこれまでに何十回と感じたことだと思いますが。