ITORAH

  • Steam/GOG
  • 2022年3月21日

2Dライクなアクションアドベンチャー。 難易度はそれほど高くないしゲームプレイのペースも速くないので、ハイペース、ハイスピードあるいは高難度なローグライトなどに慣れている人には退屈なゲームかもしれない。それとファストトラベルがない。そのため単に移動するだけという操作をしたくない人はプレイすべきではない。

不思議な光を追いかけていたイトラーはクモに襲われ連れ去られてしまう。目を覚ましたイトラーは喋る斧と出会いクモの住処を脱出する。 キャラクターのモーションについてはキビキビとしたものではない。ジャンプも同様にキビキビと制御することは難しい。しかしどちらも動作が重いということはなく触っていて気持ち好い。 各マップは複雑なものではなく、プラットフォームなどのアクションの難易度も高くはない。 拠点となる街ではお金と素材を使ってキャラクターの性能を強化できる。強化できるのは体力、スタミナ、回復回数、回復量の4つで武器の強化は無い。素材は各マップの宝箱から入手できる。 キャラクターのアクションは攻撃、ジャンプ、ダッシュそしてドッジだ。もちろん、ゲームを進めることで入手できるアクションアドベンチャーのお約束なスキルもある。ただ、攻撃のひとつにゲーム内で説明されていないものがある。それは方向キーの左右を押すのと同時に攻撃ボタンを押すと使えるアクションだ。これはいわゆる強攻撃と言えるものだが、ゲーム内で説明が無かった。強攻撃は少しモーションが長くスキが大きいので、その使い方を意識しておくほうが良い。

ゲームプレイについては、まずプレイ時間は8時間ほど、ゆっくりプレイすれば10時間ほどだと思う。上手い人なら6時間ほどでクリアできるだろう。 それほど難しくないので、あまり深く考えずに行きたい方向に突き進んでいくというスタイルが合っている。もちろん運悪く当たりの道だった場合は引き返すことになるが、マップから出ない限りモンスターはリスポーンしないのでそれほど手間はかからない。 キャラクターの強化はしっかりと行うのが良い。難しくないというのは、あくまでも平均的な感覚だ。ゲームを進めるごとに段々と難しくなっていくため、アクションが苦手だと終盤は難しい。特にラスボスはしっかり攻略する必要がある。そのため、ゴリ押して進めることができるよう準備はしておくべきだ。 各マップの映像はたびたび立ち止まってしまうほどに綺麗だ。しかしそれらはキャラクターを見失ってしまうくらい極端に描かれている場合もあるため、単純に見にくいという不便さを許容できるかどうかが重要だ。 ストーリーは終盤で一気に明らかになるという流れで、これについては好き嫌いが分かれるかもしれない。

ITORAHは攻略を楽しむような深いシステムも、やりごたえのある難易度も持っていない。さらにはファストトラベルもない。そんなゲームに私が心奪われたのは、その真面目な映像と真面目なシステムだ。 キャラクターとフィールドの映像や動きは、いわゆる「思い出補正」によって高解像度化されたスーパーファミコンなどのゲームプレイを実現してくれている。そして真面目な、別の言い方をすればありきたりなシステムに、その美しい映像が加わっただけで、私はまるで初めてアクションアドベンチャーをプレイしたかのような喜びを得た。2段ジャンプや壁ジャンプができるようになったことに心躍らせたのは一体どれくらいぶりだろうか。

私の中の過去のゲームプレイの思い出は、ときに忌々しい。それらは自分にとって都合のいいように補正され、そして現在のゲームたちに対してサムズダウンする。「これは何番煎じだ?」「こんなものは過去にプレイ済じゃないか」「私たちの劣化コピーだね」と。 しかしITORAHは驚くほどの素直さでそれに打ち勝ってくれた。補正された思い出をそのままに描き、「どうして? あなたたちはこうだったよね?」と言い返してくれた。 私は今、本当に嬉しい。このITORAHをプレイすることで、私の中の過去のゲームプレイの思い出は正しく思い出となり、やっと、私にとってのこれからのアクションアドベンチャーの体験が始まったのだから。