FEZ

  • Steam/PlayStation 3
  • 2013年5月2日/2014年8月20日

Z軸なんてボクには意味がないよ。だってボクは2Dだから。

パズルゲームだ。しかしアクションアドベンチャーでもある。だから、探索が面倒な人には向いていないかもしれない。 ゴメズの住む2Dの世界が3Dになってしまった。世界は3Dだが主人公のゴメズは2Dしか認識できない。だからゴメズは、それが見えてさえいれば奥行きを無視して利用できる。 3Dにおいて奥にある物も手前にある物もゴメズにとっては同じ面にある。そして世界を回転させて面を変えると、つまり視点を変えると物の位置が変わる。しかしゴメズにとってはやはり同じ面にある。そうして物の位置を変えて道を作る。これがFEZのシステムだ。

ゴメズの目的は世界を探索してキューブを集めることだ。ほとんどの場合、キューブがある場所はすぐ分かる。しかしゴメズには縦と横しかないのだから、その道は2Dで作り出さなければならない。 3Dを2Dで見るというのは、ゴメズにとっては自然なことだが、プレイヤーにとっては簡単なことではない。だから私たちは "取りあえず回してみる" という英知を駆使して彼を導くことになるだろう。そして取りあえず回してみた結果は私たちの経験となり、その積み重ねにより、私たちはパズルの新たな視点と論理を得る。

ゴメズの世界は小さな世界に分けられ、そして扉によって繋がっている。これがこのゲームの最も重要なものとなる。 目的はキューブを集めることだ。そしてその目的は探索を進めることによって達成できる。つまり、ゴメズにとって重要なのは探索することだ。探索していればおのずとキューブは集まる。 不思議な妖精に「キューブを集めて!」とお願いされたことに惑わされてはいけない。プレイヤーのするべきことは探索である。 大事なことなのでしつこく書こう。探索をしてパズルを解くのではない。探索をするためにパズルを解くのだ。パズルを解くこともキューブを集めることも探索のための手段だ。

ゲームプレイについては、まず自力でコンプリートを目指すのは止めたほうがいい。プレイ時間の予想は難しいが、取りあえずのクリアは8~10時間くらいだと思う。 3Dの奥行き方向を無視するという感覚に慣れるまでが大変だが取りあえず世界を回転させてみれば解決するはず。 各マップへと繋がる扉は数が多いうえに、かなり複雑な配置となっている。そのため、あとで探索し直そうと思っても、どの扉から行けばいいのかを忘れてしまっていることが多い。そして「ああ、マップを直接指定して移動できればいいのに」と思いながらプレイしていると、不意に、本当に不意に、別のマップでシークレットを発見するといったことが起こる。 そうして各マップを行き来するうちに何故か得られる旅してる感。まさかパズルを解き続けてアクションアドベンチャーのような感覚を得るとは思ってもいなかった。

キューブ集めを自力でコンプリートすることは諦めたほうが良いが、その理由は難易度だけではない。 まず、ヒントとしてゲームパッドの振動機能を利用したものがあるため、振動機能が付いていないゲームパッドやマウスとキーボードでプレイしている場合はそのパズルを解けない。 そして最後に "Black Monolith" が残る。情報に辿り着けなかったため事実かどうかは分からないが、このパズルの解法は開発者のヒントをもとにした総当たり方式により導かれたものらしい。その後の様々な推測についてはインターネットにて情報を集めることができるが、それらの説明自体が私には何を言っているのか分からない。だから答えを見た。

FEZは混乱が整然とした思考に変わる喜びを提供してくれる。そして、これはいわゆる倉庫番系のパズルに良くあることだが、キャラクターに対する愛着を持つ。ゴメズがとにかく可愛い。 それだけでも十分にパズルゲームとして優秀だと思うが、それに加えて旅した感を得られる。これが大きい。もの凄く大きい。探索が面倒な人は序盤で嫌になってしまうかもしれない。しかし探索好きなら、ゲームクリア後にきっと、せつなさのような感覚を得るだろう。 このゲームはパズルの仕組みで探索を体験させることに成功したのだ。