A Hat in Time

  • Steam/GOG/Nintendo Switch
  • 2017年10月5日/2019年10月18日

忘れかけていた楽しさ。 改めて、それを思い出させてくれたゲームです。

新しい何かを体験できるとか、素晴らしいグラフィックを堪能できるとか、そういうものはありません。どこかで体験したことのあるゲームプレイが詰まっています。 でも、それでいいよね、と思える楽しさ。 プレイして1時間ほどで「あぁ、なんて楽しいんだろう」と思いました。キャラクターの表情や動き、プレイヤーを上手く誘導してくれるアイテムの配置、ひとつひとつが本当に丁寧に作られています。

フィールドには回復用のハートやお金が配置されているのですが、それを辿っていくと基本のアクションを覚えることができます。 ジャンプや綱渡り、大きな傘に飛び乗って大ジャンプ、壁を蹴って反対側へジャンプ。それらは決してゲーム内で説明されるものではなく、プレイしていると自然と気付いて自然と使い方を覚えることができるようになっています。 コントローラーを持って、このボタンは何だろう、このボタンは何だろうと押しているとキャラクターが反応し、プレイヤーはそのアクションの使い道と操作を覚えていきます。

装置や仕掛けなどは何の説明もなく置かれています。でも、それが何なのか、どういうことなのかはプレイをしていると分かるようになります。 主人公が住んでいる宇宙船には、ところどころに砂時計の絵と数字が書かれたプレートが壁に掛かっています。説明も何もないのですが、最初のステージをクリアすれば意味が分かります。説明がなくても「あっ! そういうことか」と、絵を見て分かるようになります。 マップとかはありません。ミニマップもありません。でも、あそこって何、あれって何、と色々なものを目にして寄り道しているうちに迷わず進めるようになっていきます。 キャラクターを動かすことに集中していれば、自然とゲームの仕組みを理解できる。ゲームデザインという言葉をときどき見聞きしますが、それってこういうことなんだと実感できます。

説明がない。でも分かる、分かるようになっていく。 ゲームを始めてチュートリアルを進めて、何か新しいものを見つけるたびに小さい文字で書かれた説明を読んで、それでも覚えられなくてメニューで説明を読み直して、マップを開いて目的地を確認して、さらに情報をネットで探す。そんなプレイスタイルに慣れていた自分にとって、A Hat in Time のプレイヤーに対する接しかたは、忘れかけていた楽しさを思い出させてくれました。

ゲームプレイですが、基本はジャンプアクションになります。 プレイ時間はプレイスタイルで大きく変わります。ストーリーに沿って進める感じだと10~12時間くらいかなと思います。色々と寄り道や収集などをして、ゆっくりとプレイすれば20時間以上は楽しめると思います。 難易度はアクションが得意かどうかもありますが、それほど難しくはないです。3Dアクションの特徴である "奥行き方向の距離感" をつかみにくいという問題がありますが、リトライを繰り返して覚えることでクリアできます。ジャンプアクションとはいっても気負うことなく楽しめる感じです。 壁にのぼるときなどジャンプの細かい部分でオートアクション的な調整がされているので、ジャンプアクションに自信のある人は逆に戸惑ってしまうかもしれませんが、プレイしていれば慣れると思います。 進めていくたびに攻撃やアクションなどが増えていくのですが、そのバランスというかボリュームというかタイミングというか、そいうのが丁度良い感じです。 「これ、なんだろう」と色々試したけど分からなかったものがあっても、新しいアイテムを手に入れて試しているときに「あれ? このマーク!?」と気付いて、何か凄く自分が上達しているような気にさせてくれます。

メールの配達といったミニゲームや謎解き的なものなど色々なタイプのチャプターがあるので、単調な作業に感じることはなく気付いたら夢中になっていました。じっくりとプレイしたあとで飛び回って探索する開放感とかもあり、「もう少しだけ」と、割りと止め時を見失ってしまうこともあります。 キャラクターも愉快で、宇宙船に戻ったら可笑しな客が訪ねてきて居座ったり、妙に巻き舌でしゃべったり。殺人事件の解決のチャプターで「マールルルダールルル(murder 殺人)」と連発されたときは笑いをこらえきれませんでした。 へんなオバケに「foooooooooooool (間抜け)」と叫ばれても「分かったから用件を言えよ!」と思える感じで面白くて仕方がなかったです。

細かい部分が本当に丁寧に作られていて、時間を忘れて観察したりしてました。 宇宙船の中をルンバみたいなのが掃除をしているのですが、上に乗るとツラそうに汗をかきながらも掃除を続けてくれます。 帽子のデザインや服の色といったキャラクターの見た目を変えるアイテムもあるのですが、地味に楽しいです。 スクーターにも乗れるようになります。

何度もチャプターをプレイして、ジャンプアクションに四苦八苦して、アイテムを集めて、ラスボスを倒す。そしてエンディングを迎えると、ホロリと目に涙が浮かんでしまいました。自分では意識していなかっただけで、A Hat in Time の世界や登場するキャラクターたちに大きな親近感を抱いていたみたいです。「あぁ、このキャラクターたちともお別れなんだな」と、寂しい気持ちとクリアしたんだという気持ちが混ざりあった何とも言えない感覚でした。 プレイ時間の都合もあるとは思いますが、1度サッとクリアしてという感じではなく、チャプターのコンプリートやアイテムの収集などを楽しみ苦労してから「やることやった、さぁ、ラスボスだ」という感じでクリアすると、エンディングで感じるものも違ってくると思います。

キャラクターを操作して、見て、試して、そして分かっていく。この過程で感じる楽しさは、下手すると精神的に疲れてしまうこともあった自分のプレイスタイルを改めて見直すきっかけになりました。もともとそうやって楽しんでたんですけどね、うん。いつ頃からゲームに対して神経質に接するようになっていたのか覚えていないです。 何か特別な体験ができるゲームではありません。本当に、かつて何かで体験した感じが詰まっています。でも、その一つ一つが丁寧に作られていてプレイヤーを楽しませてくれます。

Switch版が2019年10月18日に発売(配信)されました。Kakehashi Games がTwitterにて10月18日の発売を告知していたのですが、日本でのパッケージ版については未定らしいです(2019年10月15日時点)。