FINAL FANTASY XV

  • PlayStation 4/Xbox One
  • 2016年11月29日

FINAL FANTASY XV をオフラインRPGとして楽しもうとした結果、どうなったかという話。"ファイナルファンタジー" ではなく、単純にRPGとして楽しむこと。 その結果は "写真" でした。写真によってプレイ体験を振り返り、写真によって実感する。ゲームという架空の世界なのに、そのプレイ体験を思い出すとき、本当に自分がFF15の世界を生きたかのような感覚になります。「これはゲームなんだ」と自分に言い聞かせなければならないほど、"現実に体験したことの思い出" として語ってしまう。 ロールプレイではないRPG。JRPG。

3~4時間ほどプレイして「これはFF12かもしれない」と思い、モブ退治を中心としたバトルを楽しむことに集中してプレイしようと決めました。そうなるとプレイ時間130時間以上は必要になるかなと少し悩みましたが、でも、バトルの体験がクリア後の感覚に与える影響を考えると「とりあえずサッとクリアしてから」というプレイよりも、初めから時間をかけてクリアするのがいいと思いました。 そして、その結果、FF15はFF12ではありませんでした。オフラインRPGとして楽しむにはバトルの体験が違いすぎます。これは20時間ほどプレイして気付きましたが、それでもモブ退治を中心にバトルを楽しむ感じで時間をかけてプレイしました。それがFF15の世界を楽しむことにつながると思ったからです。 バトルの練習や料理の材料を手に入れるためにモンスターを倒し、チョコボで目的地に移動し、釣りをして夜を待ち、キャンプして料理を食べる。そうやってプレイしていると、そこには、かつてJRPGをプレイして感じた体験が待っていました。

FF12が好きという流れでFF15というのはどうなんだと自分でも思いました。でも、そんな自分をソワソワさせた理由が "どういう体験になるのか想像ができなかった" というものです。 どういう感じなのか分からない、それでプレイしたらビックリするほど面白かった、過去にそういう経験をしたからです。それがFF12でした。 FF12は紹介映像や説明などを見ても良く分からず、しかも1度クリアしても分かりませんでした。これってどういうゲームなんだと思い2週目を進めて気付いた楽しさ。 RPGという有名なジャンル、しかもファイナルファンタジー。プレイしなくても何となく想像できるはずの体験が想像できなかったFF12。それをプレイして「あぁ、そうなんだ、こういうゲームなんだ、なんて楽しいんだろう」と思えた経験。それがあるので、どういう感じなのかイマイチ良く分からないFF15も、もしかしたら楽しめるのではないかと思いプレイしました。 オープンワールドでアクションの要素が強いバトル、綺麗な映像。そのことだけを頭に思い描いて、それでどういうゲームなのか、どういう体験ができるのか、というのは自分で判断しようと思いました。

プレイヤーキャラ(主人公)と仲間3人の4人パーティ。4人は固有のフィールドスキルを持っていて、特定の条件でレベルアップします。そのスキルが「釣り」「サバイバル」「料理」「写真」の4つです。 それらは事前に分かっていた情報で、料理?写真?という感じでしたが、改めてプレイしてみるとやっぱり料理?写真?という感じでした。スキルはレベルアップするとはいっても、それはRPGなのかと。それによってどんな体験を得られるんだと。 きっと自分には合わない、楽しめない要素なんだろうなとスルーする感じで進めていたのですが、序盤でパーティのレベルより10くらい上のモブに挑んだときの話。やけに簡単に倒せて「バトルの難易度は低いのか……」と思っていたら、同じレベルくらいのモブに苦労したりする謎。そして気付いたのが、レベルが高いモブでも料理によるステータスアップでゴリ押しできるということ。攻撃力30とかの武器を使っている頃に、料理によって攻撃力100アップとかできます。料理を食べまくって10レベルくらい上の敵を倒していく楽しさ。 そこから始まる料理スキルの強化。どうすれば新しいレシピを思いついてくれるのか、どの料理がいいのか、費用対効果の高い料理はどれか。 「料理はなんて楽しいんだろう!」と料理を食べてストーリー無視してモブ退治しまくりでした。

プロンプトの写真。これはスキルなのかと。RPGなのかと。 料理以上にスルーする気満々で進めていたのですが、初めて(ゲーム内時間での)夜更かしをしたときの話。夜は怖いモンスターが出現するので、夜8時くらいにはキャンプして料理を食べて昼に探索という感じでした。でも結局は探索に夢中になって遠くまで進んで夜になってしまい「1回やっとこう、死んでおこう」と大量のボムとLv30の鉄巨人に挑みポーションを使いまくって結局は逃げ出して立ち止まると、朝焼けの空。たぶん20分くらいは戦っていたんだと思います。 「朝だ、綺麗だ」と思って眺めていたときの感覚。現実の生活で初めて夜更かしをして朝の空を見たときの、ワクワク感やせつなさや後ろめたさを覚えた感じ。 朝にキャンプして料理を食べて寝とこうと思って写真を見たら、鉄巨人と戦ってる写真とかがあるわけです。 この感じ。忘れかけていたこの感じ。 「あぁ、これは……JRPGだ」

かつてのJRPGの話。2Dドット絵とかプレステとかの3D初期の頃のRPG。 例えばゲーム終盤で空を飛べる乗り物を手に入れ、嬉々として飛び回っていたら、「この洞窟って、町のすぐ近くなんだ……」と驚いたりすることがありました。町を出て橋を渡って迷路のような森を抜けて、やっとたどり着いた洞窟。もうイヤだとヒィヒィ言いながらクリアした洞窟が、空を飛んで山を越えれば数秒で行ける。 そして、これまでのプレイ体験を思い描きます。ここに行ってから川を渡って町に着いて、そのあと山を越えて海に出て大きい島に行って……。色々なところを歩いて回ったと実感します。あのボス強かったな、このダンジョン嫌い、ここのBGM好き。 FF15は、それに近い感覚を写真によって実現できています。 写真なんです。写真。FF15をより楽しめるかどうかは写真なんです。 写真?と思っていた自分が、いつの間にか普通に写真を楽しんでいました。

2Dドット絵とかプレステとかの3D初期の頃のJRPGは、その世界の広さは頭の中の想像でした。星がどうだとか国がどうだとか、実際の広さではなく全て想像です。そして、その広い世界を探索し移動し戦うという感覚が残ります。 今の時代のゲームの映像は、想像ではなく現実の広さに近い感覚になりました。100m先とか1Km先とか。想像で作り出した広さとは比べ物にならない狭さです。星がどうとか国がどうとかなんてことは無理です。メチャクチャな広さになってしまいます。 でも、想像で作り出した広い世界を冒険した感覚がFF15にはありました。実際はそんなに広くないんです。いや広いんですけど、でも現実にはどうなのかと考えれば狭いです。星とか国とかっていう広さとは比べ物になりません。 それでもFF15をプレイして感じたのは、広い世界を探索し移動し戦うというものでした。

かつてJRPGで体験した感じ。それまでのプレイ体験を振り返って感じる "せつなさのような何か"。 映像は綺麗になり、広さや大きさはリアルになり、キャラクターも賢くリアルになった今の時代のゲーム。もっと綺麗に、もっとリアルに、もっと賢く、そう思っています。どんどん突き進んで欲しいと思っています。でも、FF15をプレイして、かつて体験したJRPGの感じを今の時代の技術で実現して欲しいとも思っていることに気付きました。

ゲームプレイですが、バトルに苦労しました。アクションとはいってもボタンを押しっぱなしで色々な攻撃ができるようになっている、といった説明を聞いたことがあったのですが、これは、あくまでもキャラのレベルを "適正レベル以上" にして進めていく場合の話だと感じました。 例えば、モンスターのレベルが20のエリアだとしたら、キャラのレベルを25~30くらいにしておくと軽快にバトルをこなすことができる感じです。キャラのレベルがモンスターと同じくらいだと割りと難しいです。 相手の攻撃などを確認して時間をかけて倒していくか、どんどん技を繰り出して爽快に戦っていくか、どちらにするかをプレイする前に決めてしまったほうがいいかもしれません。

相手の攻撃などを確認して時間をかけて倒していく場合、バトルの仕組みなどを把握するまでは相当なストレスを感じることになると思います。"ボタン押しっぱなしで" といった戦いかただと意味も分からず戦闘不能になっていきます。 キャラのレベルが相手のレベルと同じくらいだと「意味が分からない……」とつぶやくことになるかもしれません。 実際にはダメージを喰らうのは理由があるのですが、アクションな操作が得意かどうかということが絡みます。相手の攻撃パターンなどを覚えるとしてもモンスターの種類も多いので覚えきれません。 プレイにストレスを感じるようなら、推奨レベルより10以上レベルを上げて回復アイテムを使いまくって、細かいことを気にせず軽快に倒していくほうが楽しめると思います。

ストーリーについてはどういう感じでプレイしたかで印象が変わると思います。 とりあえずプレイしてサッとクリアするという感じだと物足りないかもしれません。 特に、悪役が悪役となった理由、復讐を決意した理由、それに対する正義側の理解(認めることはできないとしても)についての掘り下げがありません。突然真実が明かされ、お前を倒すという流れになってクリアする感じになります。 しかも、その真実もプレイヤーによっては気付かないんじゃないかというくらい微妙な説明や表現になっています。 時間をかけて探索やバトルを楽しんでクリアするとキャラクターに対する思い入れも変わるため、プレイヤーによっては涙をこらえるのに苦労するかもしれません。 ラスボス前に写真を1枚選びます。悲しい音楽が流れるといったこともなく、ただ写真を1枚選ぶだけです。でも、その瞬間に自分がプレイした体験を振り返り、ノクトたちがFF15の世界で生きたという実感を得ます。 主人公のノクトは "真の王" となる人物です。 六神と呼ばれる神たちは、世界がおかしなことになっていると気付いていました。そして真の王の誕生を待ちました。 真の王は、世界を統治して平和に導く存在などではなく、世界を正常に戻すために必要な "いけにえ" です。真の王が命を差し出すことで復讐者の苦しみを終わらせることができ、世界は元にもどります。 真の王になること、いけにえになること。その覚悟を決めたノクトは「やっぱ、つれえわ」と仲間に明かし、旅の写真を1枚選びます。 ノクトが選ぶ写真はプレイヤーが選ぶ写真です。プレイヤーが体験したFF15の世界の写真です。自分がノクトたちをFF15の世界に生かし、自分も一緒にFF15の世界を生きたと感じるほどの不思議な感覚になります。 そしてエンディング。きっと自分が選んだ写真が最後に表示されるんだろうなと想像はできます。でも……。 クリアする時点で保存されていた写真が表示されていきます。「あ、これやばい」と思いました。 初めて夜に探索をして「ムリ、やっぱムリ」と必死で鉄巨人と戦ったときの写真、チョコボで岩のアーチに登り朝日を眺めるツーショット、良く分からないけど何となく保存しておいたカエル好きのエイゲル博士のアップ。 それらを見ながら、自分が体験したFF15のプレイを思い出し、目に涙が浮かんでしまいました。 FF5のエンディングで、最後にキャラクターたちのレベルや獲得したアビリティが表示されます。それを見て自分のプレイを実感し、やはり目に涙を浮かべたことを良く覚えています。それと同じ感覚でした。 この写真は自分が選んだ写真です。なんてことはない写真撮影のイベントでの1枚です。プレイしたことがある人にとっては別におもしろくもない写真だし、プレイしたことのない人にとっては全くなんのことか分からない写真です。 でも、自分にとってはプレイ体験の全てを思い出すことができる、とても大事な一枚です。FF15はどういうゲームなのかを実感し、プレイ時間130時間超え上等と覚悟を決めた、その瞬間の写真です。

気に入らないとか、下手すると腹が立ってしまうこともありました。頻繁に外されるターゲットのロックオン、バトルの状況を把握できなくなるカメラ、何でやられたのか全く理解できない大ダメージ。そこを乗り切るのに10~20時間はかかったと思います。 キャラのレベルを上げて適正レベル以上で進めていけば爽快感がありますが、3Dアクションで感じるストレスを全て詰め込んだゲームだと感じることもありました。 それでも、広いフィールドを探索して、バトルに四苦八苦してゲームをクリアするとき、これまでのプレイを振り返り「こういうゲームか、楽しかった」と思いました。 そして、一番意味のないものだと思っていた「写真」が凄く重要なものだと気付きました。 やっぱり写真なんです。

FINAL FANTASY XV をオフラインRPGとして楽しもうとした結果、どうなったかという話。"ファイナルファンタジー" ではなく、単純にRPGとして楽しむこと。 その結果は、ファイナルファンタジーというJRPGを思いっきり楽しむというものでした。 ラスボス前に、それまでのプレイを振り返って感じる、広い世界を探索し移動し戦ってきたという体験。 自分の場合は150時間かけてクリアしたので、60~80時間ほどでクリアした場合にどう感じるのかは分かりません。ですが、クリアまでの時間が長くなるほど「写真」というシステムの重要さは増すと思います。 お馬鹿な写真かもしれないし、バトルの写真かもしれないし、風景かもしれない。それはプレイヤーが何に時間をかけたかで変わると思います。 写真を見てプレイの体験を振り返る。写真によって、ノクトたちがFF15の世界に生きたと感じ、そして、どう生きたのかはプレイヤーによって変わる。 一本道なJRPGでありながら、その体験はプレイヤーによって違うという、少し変わったファイナルファンタジーでした。