Hoa

  • Steam/GOG/Xbox One/Nintendo Switch/PlayStation 4
  • 2021年8月24日/2022年2月10日

役目とか義務とか、あるいは運命とか。それが社会によって決められたものだったとき、そして個人の思いがそれとぶつかったり、その内側から抜け出したいと願ったりしたとき、それは憎むべきものに変わってしまうと思う。そして他人のそういった悩みに対する反応とかって、それに共感できるかどうかが重要になってくるとも思う。 それがフィクションだったらどうなのか。その物語に登場するキャラクターは作者の用意した世界、そしてそのルールの中で生きている。例えば「METAL GEAR SOLID 3 (MGS3)」。私はそれをプレイして、こうなるしかなかったのかと考えを巡らせた。けれども同時に、彼女は長くつらい役目からようやく解放されたのだとも思えた。それはMGS3の世界とルールにおける彼女に対する救いなのだと思えた。 それじゃフィクションの世界において、登場するキャラクターの役目や義務や運命に対してそれを判断するための情報が足りないと感じたとき、私はどうなるのか。その答えを「Hoa」は教えてくれる。

このゲームは物凄くやさしい音楽と映像で描かれる。登場するキャラクターたちは誰もが優しく、主人公Hoaを傷つけるものはいない。 その世界で過去に何かがあり、Hoaはその生き残りであるらしいことが他のキャラクターたちによって語られる。そして私は、うっすらとだけど、Hoaは何かしらの役目を担っているのではないかと思い始める。けれどもそれが何なのかは分からない。 うっすらと何かを思いながらもやさしい音楽と映像と少しだけ難しいゲームプレイを楽しんでいると、やがて雰囲気が一変する。明らかに何かが違っていて、これは真相に近づいているんだなと気づかされる。そして突然にカットシーンが挿入され、少しだけ難しかったゲームプレイは割と難しいものに変わり、長いアニメーションのあとゲームは終わる。

ラストのアニメーションは、言葉により何かを語ることはなかったが、過去にその世界で何が起こったかを説明していた。そして私はHoaは何者なのかを理解した。しかし、それ以上のことを示してくれなかった。 私が知りたかったのはHoaが何かしらの役目や義務を担っていたのかどうかだ。そして何よりも重要だったのは、Hoa自身がそれを理解していたかどうかだ。それを示してもらえなかったのだから、すべては私の想像で決まる。Hoaの世界においてHoaが救われたかどうかは私の想像で決まる。 私は恨んだ。どうしてそこをプレイヤーの想像に委ねたのかと。彼らが救われたかどうかは、その世界の彼ら自身に示させ、そしてプレイヤーを納得させて欲しかったと。 私はHoaの世界に住んでいない。傍観者だ。その私にHoaの役目や義務を決めろというのか。運命を語れというのか。私がどんな答えを示したとしても、それは単なる想像であり、自分が生きる世界、つまり現実の世界のルールや価値観の外には出られない。だから、Hoaの運命とその結末に対する答えは物語の世界の中で示してほしかった。

私はHoaの役目や義務や、あるいは運命というものを決めなければならなかった。プレイヤーであり、つまり傍観者である私がそれを決めるということは、私がその世界の神になるということだ。何ら責任を持たず興味本位で「Hoaはこうだった」と語る。それをやらなければならなかった。そして答えを出さなくてはならなかった。それが完全に想像によるものだとしても。 私の答えはこれだ。 「Hoaは救われた」 なぜこの答えなのか。理由なんてない。そう思わなければ、私自身が救われないからだ。

ゲームプレイとしてはアクションアドベンチャーだけど、いわゆる雰囲気ゲーになると思う。プレイ時間は長くても4~6時間くらい、速い人だと2時間くらいかもしれない。 主人公のHoaは何もしゃべらなくて、他のキャラクターたちのセリフをもとに何かを想像しながら進めていくことになる。 探索については序盤はすごく簡単だけど終盤は割と難しくなる。そのためある程度ゲームに慣れていないと詰まってしまうポイントもあるかもしれない。その場合はプレイ動画や攻略情報に頼ることになるけど一気に現実に引き戻されるので悩ましいと思う。プレイ時間が短いので、一度没入感を失うと再没入することなくクリアしてしまう可能性もある。

音楽と映像はもちろん楽しめるけど、とにかくHoaが何をどう感じどう思うのかという部分がプレイヤーの想像で決まるので、そういった情報の少なさとか想像することを楽しめるかどうかは重要だと思う。そこを楽しめないと単純なアクションアドベンチャーになってしまう。 また、物語の真相みたいのものがラストのアニメーションだけですべて語られていて、それが少し不満。アクションアドベンチャーとしてしっかり作られているのだから、プレイヤーに操作させ、そのゲームプレイを通して理解させてほしかった。でもそれだと雰囲気ゲーじゃなくなってしまうかも? なんにしても想像することを楽しめるなら、なぜかふと思い出してしまうようなゲームになると思う。

SteamやGOGなどで発売されていたゲームだけど、SwitchとPS4でも2022年2月10日に発売された。すでに発売されていると思っていたのだけど家庭用機版は(Xbox Oneを除き)日本では未発売だったみたい。海外の各家庭用機版のページをみると発売日は2021年8月24日になってる。 Hoaとその世界が愛しくてたまらない。 日本でも発売されたと知ってまた初めからプレイした。やっぱりHoaは救われたんだというのが正解であって欲しい。