Bound by Blades
- Steam/GOG
- 2022年11月15日
これ。この "システムで楽しませる" という感じ。 かなりミニマルなアクションRPGなので、例えば「Swords & Souls: Neverseen」などと比較すると少し物足りないかなとは思います。しかし、そのゲームプレイの楽しさは決して劣りません。そして何よりも日本語でプレイできるという嬉しさ。 ただ、v1.7.3.5 の時点でバグがあって、1280x720 などの解像度でプレイしている状態で「忘却のポーション」というアイテムを購入すると、ステータスを割り振るためのUIが強制的に1920x1080で表示されてしまい操作不能になります。これは私のパソコンの問題かもしれないのですが、1280x720などのウィンドウモードでプレイしたい人はその時だけ1920x1080にしたほうがいいと思います。
いわゆるボスラッシュとなっていて、すべてのバトルがボス戦です。ボスを倒すごとにゲームが進行し、ときおり挿絵とテキストによってストーリーが語られます。 ゲーム内には最低限必要だと思われるものしか用意されていなくて、最初の村は1画面分しかないです。村にいるキャラクターはストーリー進行用が1人と主人公たちの友達が1人で、建物は装備用のお店が1軒と家が1軒です。他には何もなくて本当にそれだけです。 村の東側と西側には標識があり、それを調べるとそれぞれ素材集収用のマップとバトル用のマップへ移動します。そして素材用のマップも1画面で完結しています。
とにかく最小限のものしかなくて、アクションRPGにおける各要素を一つずつ抜き出したらこうなるという感じです。それじゃそのゲームプレイは最小限な体験なのかというと、そうではなかったという不思議。 最小限の中で作業を繰り返し、ボスを倒して進めていく。それによって得られる体験は、移動と探索を行いボスを倒してイベントを見るという一続きな進行によるものと比較して、違いはありませんでした。どちらもキャラクターを強化し、素材を集め、ペットを育て、ボスを倒すというものです。 そして、ある最悪の疑問が頭をよぎります。 「5分かけて町を見て回り、10分かけて移動し、1分間のイベントを見るという作業は無駄なことなのだろうか」 この疑問は、このゲームが最小限なのではなく他のゲームが蛇足なんだ、という答えにたどり着きます。しかしそれは私にとって非常にマズい答えです。なぜかというと、私が好きな体験の多くは、その無駄なものによって提供されてきたからです(つまり探索好き)。
時間をかけてマップを探索し長いイベントを見るという作業は、それがプレイ体験に何ら影響しないのであれば必要のないものだと思います。しかしそれらは "決して無駄ではない何か" に化けることがあって、それが昨今、特に欧米において重要視されている "ナラティブ" なんだと思います。 しかしナラティブは非常にやっかいなものです。なぜなら、すべてのプレイヤーが作り手の想定する通りにゲームを進めるという状況は実現できないからです。「このエリアは15分かけて探索してボス戦に挑む」と仮定したところで、あるプレイヤーは探索ガン無視で突き進むかもしれないし、別のプレイヤーは30分以上かけて隅々まで探索するかもしれません。それを制御するというのは本当に大変なはずです。 そう考えれば、このゲームは作り手がしっかり制御できるものだけを用意して、その中で最大限に楽しんでもらえるように作り込まれたゲームだと言えます。そしてそれがこのゲームのナラティブを提供している、という答えにたどり着きます。うん、ナラティブに戻った。この答えならマズくない。
ゲームプレイですが、プレイ時間はとりあえずのクリアが6時間ほどかなと思います。アクションRPGに慣れている人だと4時間くらいかもしれないです。そこからは飽きるまでになります。 バトルが特徴的で、バトル中のプレイヤーキャラの移動はマップの四隅だけになります。その四ヶ所を利用して敵の攻撃をかわしつつダメージを与えて倒すというバトルです。 どのボスと戦うかはプレイヤーが選択できるようになっていて、すでに倒したボスとはいつでも再戦できます。 ストーリークリア後は各ボスの強化版と戦える「エクストリーム」、各階で連戦をする「タワー」、いつまでも戦い続ける「ダンジョン」という3つのモードが順番にアンロックされます。
操作キャラクターは3人の中から選ぶことができ、それぞれ盾、剣、弓と特徴が異なります。操作キャラはバトル中でなければゲーム内のオプションからいつでも変更可能です。 キャラクターの育成は、レベルアップ時に獲得するポイントを各ステータスに割り振るというシステムです。どのステータスに割り振るのかはプレイヤーが好きに決めることができ、そして割り振ったポイントは「忘却のポーション」というアイテムを購入すれば振り直すことができます。 装備は素材を消費して作成し、作成済みの装備は同じく素材を消費して強化できます。各素材はボスを倒した時やドリームランドという素材収集用のマップで入手できます。装備については各キャラクターで見た目が異なりますが、性能はそれぞれ同じです。 また、ストーリーを進めるとエンチャントを利用できるようになります。エンチャントは魔法によって様々な効果を装備に付与するというもので、どの効果が付くのかはランダムになっています。
ストーリークリア後には特定の素材を使用して各装備の能力を解放することが可能で、これがやり込みにおいて重要なものになります。 各装備にはその種類によるパッシブスキルが設定されていて、同じ種類のものを装備することでボーナスとしてそのスキルが付与されるというシステムになっています。例えば同じ種類のものを2つ装備していれば「ペットを強化」、5つ装備していれば「ペットを大幅に強化」といった感じです。 しかし装備の攻撃力や防御力は、あとで入手可能になるものほど強くなります。ボスもそれに合わせて強くなるため、自分の好きなスキルの装備にこだわっていると徐々に厳しくなる場合があります。これを解決してくれるのが装備の能力の解放です。 能力を解放した装備は攻撃力や防御力がすべて同じになります。それによって好きな装備だけど弱いから使えないということがなくなり、色々なスキルで攻略を楽しむことが可能になります。
拠点を城下町に移してからはペットを飼えるようになります。4体まで飼うことができて名前を付けることができます。ペットはバトルに連れていくこともできるし、周辺を探索させて素材を入手することもできます。 素材をエサとして与えることでステータスを向上させることができ、どのステータスを上げるかはプレイヤーが好きに決めることができます。そして特定のアイテムを与えると進化して姿が変わります。
難易度はすごく丁寧に調整されていて、それでいて攻略はとても自由です。 キャラクターの育成では平均的な強さにもできるし、特定のステータスだけをとことん上げていくこともできます。バトルはコツコツと操作スキルを上達させて倒してもいいし、その時点で確実に倒せるボスを倒し続けてレベルを上げて乗り切ってもいいです。 そういった丁寧な調整は装備の作成と強化についても行われています。例えば、装備を強くしないと次のボスに勝てない、でもそのための素材を落とすボスも強いから安定して倒せないというとき。そんなときはペットに周辺を探索してもらって得た素材で強い装備を用意できます。より良い素材を入手するにはペットのレベルを上げる必要がありますが、それについても確実に倒せるボスと戦って得た素材で育成できるようになっています。必要なお金も倒せるボスと戦っていれば貯まります。
操作キャラクターはいつでも変更できるのですが、私にとってこれがとてもいい感じに機能しました。 強いボスであってもキャラクターが強くなればヌルくなりますが、そんなときにキャラクターを変えると、何の手間もなくキャラ育成と装備の強化を含めたバトルの攻略を初めから楽しめます。最初からプレイして移動して長いイベントシーンを見直してなんてことはありません。 それに加えてステータスに割り振ったポイントをすべて振り直せるというシステム。そのためのアイテムを購入しないとダメとはいえ、価格はそれほど高くないです。 それらの手軽さと気持ちよさは他のゲームはもう楽しめないのではないかと心配してしまったほどで、ストーリークリア後のやり込みへの意欲にもつながります。
これは個人的な好みの話になりますが、私は探索の面倒さに対する耐性が高くて、逆に稼ぎ関連の作業に対する耐性が低いです。稼ぎと同時にフィールドの映像やバトルシステムを楽しむことができれば割といけますが、本当にただ操作して稼ぐだけの作業は10分ほどで嫌になってしまい、そのままつらい難易度で進めたほうがいいと思ってしまうくらいです。 そんな私でも、このゲームの稼ぎは楽しかった。それはたぶん稼ぎ1回分の繰り返しにかかる時間が3分ほどと短いこと、移動などの操作がほとんど発生しないこと、そして丁寧な難易度調整によって、その稼ぎがバトルの攻略に活きていると確実に実感できたからだと思います。
Bound by Blades。 アクションRPGに必要なものだけを用意した結果、そこにはシステムという骨格だけが残りました。そこに改めて少々の肉を詰めて味付けをし、おいしそうなゲームを求め彷徨う人々を誘う。 システムで楽しませるゲームとしては、探索とストーリーも上手く落とし込んでナラティブを実現したという点で、先に挙げた Swords & Souls: Neverseen が優れていると思います。しかし、このミニマルなシステムによるミニマルな作業を繰り返すアクションRPGは、想像していた以上に手軽で気持ちよく、そして自由です。それは決して劣っていないと言えるほどのものでした。