Return of the Obra Dinn
- Steam/GOG/PlayStation 4/Nintendo Switch
- 2018年10月18日/2019年10月18日
私は、先日2019年1月3日午前1時、Return of the Obra Dinn のゲームプレイにおいて、乗客乗員60人全員の安否と死因を確認できましたことをここに報告いたします。ご参考までに、プレイ時間は16時間27分であることも合わせて報告いたします。
クリアして何が嬉しいかと言うと、それはもう単純で、無理と思っていたことをコツコツと手がかりを探し達成できたことです。 「それって……普通じゃね?」と思うと思います。自分も実際にプレイしていなかったらそう思うと思います。そう、このゲームの楽しさというか没入感というかプレイ感というか、そういうものってプレイしないと分からないと思います。思う思うって何言ってんだと思うと思うのですが、実際にプレイしてみるとそう思うと思います。 プレイしてみないと分からないっていう元も子もない説明になってしまうことの理由の1つとして、アドベンチャーというゲームについての感想とかって凄く書きにくいというものがあると思います。
手がかりを見つけ謎を解く。 そう、手がかりを見つけて謎を解くんです。手がかりを見つけることでゲームを進めることができる。 ゲームの難しさとかを説明しようとすると、手がかりの見つけにくさや分かりにくさ、そして、その手がかりを見つけたときの喜びとかに触れる必要があります。ですが、"手がかりを見つける" ということがゲームプレイの重要な要素であるために、例えば「ベッドの位置が少しズレているのを床のホコリがない部分を見て気付く必要がある」という感じで手がかりを見つけることの難しさを説明をしてしまうと、それ自体がネタバレになってしまいます。本当なら10分20分と意味のない探索を行って「あーそいうことか、そういうことか」と気付く喜びがあるのですが、その説明を読んでしまったがために、プレイしたときに迷うことなくベッドを動かし謎を解いてしまいます。 それを避けて説明するとなると、結局は「それってアドベンチャーとして普通だよね?」というものに落ち着きます。 そして、オブラディンは手がかりを見つけるということがプレイ体験の中心になるゲームで、そのことが世界観や映像の体験にも影響するのですが、その重要な部分を全く説明できないという悲しい状況になってしまいます。 (「ベッドの位置が……」はオブラディンの手がかりとは全く関係ないので安心してください)
オブラディンはどういうゲームかというと、行方知れずだった船が見つかったので調査に向かうという設定のゲームです。そして、残留思念を見る事ができる懐中時計を使い、死者たちの生前に何が起こったのかを調べ、乗っていた人たちの身元と安否、死亡したのであれば死因を特定していきます。 これがオブラディンの説明です。だから何だと思うかもしれません。なので、もう1歩踏み込んで説明する必要があります。 オブラディンは、それが誰なのかを特定する段階と、何故死亡したのかを特定する段階があります。 誰なのかを特定する段階は、テキストや映像によって推測することが可能です。ですが、推測で止まってしまっている人物が発生します。 何故死亡したのかを特定する段階は、テキストや映像から手がかりを見つけて直接特定する必要があります。推測ができません。死者に質問とかも当然できません。そして、誰に殺されたのかを特定する必要があります。ここで、それが誰なのかの特定が絡んできます。 つまり、それが誰なのかの段階で間違っていると、誰に殺されたのかも間違っていることになるため、誰なのかが推測で止まっている人物が多かったりすると特定が全体的に進まないこともあります。 さらに、推測や特定のための手がかりのなかには、気付いた自分に感動すらしてしまうほどに気付きにくいものもあります。 これだけならやっぱり普通に思えるのですが、問題は、その2つの段階が順番に行われるのではなく、入り乱れて入り乱れて進んでいくということです。名前だけが特定されている人、死因だけ特定できている人、名前が違うのか死因が違うのか判断すらできない人、そんな状態がずっと続きます。そうやってプレイしているうちに、推測可能なのか手がかりから特定する必要があるのか訳が分からなくなってきます。 具体的にどうなってしまうかというと、死因は推測から特定ができないのに、他の人物の名前と安否を特定していけば消去法的に分かるのではないかと間違った判断をしてしまったり、今自分が行っているのは推測のためなのか特定のためなのかが分からなくなって(大げさではなく)思考が止まってしまったり、そういった混乱がプレイヤーを襲います。
オブラディンは、推測→特定→推測→特定というふうに順番に進まずに、特定→推測→推測→特定(当たり)→特定(はずれ)→特定(当たり)→推測という感じになります。そして自分が今何を求めて探索しているのか分からなくなってしまいます。いつの間にか目当ての人物とは違う人物のことを推測し始めていたりします。 そんな混乱を乗り越えて、全員の名前と安否と死因を特定できたときの嬉しさ。スタッフロールを眺めているときの安心感。16時間という長くはないプレイ時間でしたが、そのプレイ体験は忘れることはないと思います。
ゲームプレイですが、難しいです。どれくらいかというと、最初のエンディングは6時間くらいプレイしたと思うのですが、特定できたのは60人中10人くらいだったと思います。とりあえず起こった出来事を全て確認できたら、安否をどれくらい特定できたかに関係なく船を降りることができます。調査を完了させるかどうかはプレイヤーが決めるのですが、普通に終わらせました。難しすぎて。これ無理かもって思いました。それくらい難しいです。 でも、何故か続けてしまったという不思議。本当に不思議です。 最終的に3割くらいは当てずっぽうだった気がしますが、それでも当てずっぽうできる状態まで持っていくための集中力みたいなものは必要になります。
名前の特定は全体的に難しいです。ある程度の人数を特定できていれば、当てずっぽうや消去法的に当てることもできますが、そのためのある程度の人数の特定が厳しいです。手がかりも気付きにくいものが多いので、それに気付いたときは本当に嬉しいです。 死因は割りと簡単なものが多いですが、いくつかは映像を良く見ないと分からないものがあります。そのうち2人は本当に分からないです。気付いたときは声を上げてしまいました。もちろん、たくさんある死因を全て試せば当たりますが、それをする気にさせない仕組みがあります。それが "正解かどうかは3人ずつ分かる" というものです。3人正解しないと安否の特定が登録されません。2人正解していても3人目が間違っていたら、その3人の安否確認は進まないようになっています。そのため、誰かの死因を総当りしても、そもそも他の誰か1人を間違っていると正解しているかどうかも分かりません。これが本当に厳しいです。いつまでも安否確認が進まないときに、誰が正解で誰が間違っているのか分からないので、下手すると合っている人物の情報を変更してしまう可能性もあります。
安否を特定する手がかりは確かにあるのですが、その手がかりを見つけるのが本当に難しいです。当てずっぽうが上手く行って特定できたあとで「これは……」と気付いてうなだれたときもありました。 また、死因は分かるんだけど、それをどう表現すればいいのか分からないときもありました。映像が白黒というのも原因の1つだとは思うのですが、単純に「これ何?!」と何で攻撃されているのか分からなかったりすることがあります。その場合でも、よく見ると手がかりがあったりするのですが、その辺も下手するとネタバレになるかもしれないので詳しくは書けないのがつらいです。
Return of the Obra Dinn 。プレイ体験としてはパズルゲームのように感じる瞬間もありました。推測して特定して正解するということをコツコツ繰り返す感じが、どうにも解けなかったパズルをクリアしたときの感覚を思い出させました。 いつまでも死因が合わない人物がいて、いやこれ以外ないでしょ、と思っていても、改めて映像を見直して「いや違う、違うぞ、あーそうか、そういうことか、あーそうかー、これは分からないねー」と、気付いた自分に感動してしまうゲームでした。