The Spirit and the Mouse

  • Steam/GOG/Nintendo Switch/PlayStation 4, 5
  • 2022年9月26日/2023年7月23日/2023年7月20日

日本語未対応だったときの感想です。現在は日本語でプレイ可能です。ただし、GOG版は日本語未対応(2023年10月時点)のようです。 日本語版は「the Spirit and the Mouse 精霊とネズミのおはなし」というタイトルで、Nintendo SwitchとPlayStation 4, 5にて2023年7月に発売され、Steam版も2023年10月のアップデートで日本語に対応しました。

誰かを助けたいと思っているネズミが主人公で、探索がメインのアドベンチャーです。ジャンプアクションがありそうと思うかもしれないですが、ないです。 ある嵐の夜、町の住人のスカーフが風で飛ばされてしまうのを見た主人公は、スカーフを取り戻そうと向かった先で雷に撃たれてしまい、不思議な電気の力を手に入れます。そして主人公は電気の守護者の力を取り戻すため、町の住人を助けることになります。

住人たちは嵐による電気のトラブルに悩まされていて、それらのトラブルは Kibblin-Box という電気を供給する装置を稼働すれば解決できます。そしてそのためには Kibblin という電気の妖精たちにボックスの中へ戻ってもらう必要があります。しかし彼らは彼らで何かをやろうとしていて、それが解決するまでは戻ってもらえません。 そこで主人公が Kibblin を助けるために奮闘し、Kibblin-Box を稼働させて住人たちを助けていきます。

ゲームプレイですが、プレイ時間はゆっくりプレイしても6時間ほどだと思います。早い人なら4時間くらいでクリアできるかもしれません。ただ、これは英語がペラペラな人の場合で、私は辞書で単語を調べながらプレイして10時間かかりました。 人によっては退屈に思えるほどにゆっくりとしたゲームプレイになります。しかし、このゆっくりとしたペースとKibblinたちとの愉快な会話によって、これらは "ある一夜の不思議なできごと" であるという実感を得られます。何かとても貴重な体験をしているように思えてきて、終盤のイベントをこなしているときは「ああ、これで終わりなんだな」とすごく寂しくなってしまいました。

Kibblinたちを助けたあと、彼らがボックスの中へ戻るとき「もっと話したかったな」と寂しさを強く感じます。もちろん彼らはそれが役目であると理解しているし、彼ら自身もそれを理解しています。でもボックスの外にいるときの彼らはとても活き活きしていて、そして愉快です。そんな彼らが電気を供給するためにボックスの中で頑張っている姿を見ると、なにか申し訳ないように感じてしまいます。 しかし、そんな私の気持ちを分かっているかのような終盤のストーリー展開。私は大喜びで Kibblin たちに話しかけてました。

私はエンディングについて少しモヤモヤしています。最後に主人公は Maker という電気の神みたいな存在によって Spirit Guardian に任命されます。 主人公はネズミですが、ネズミだからこそできたことがあったのだし、ネズミだからこそ抱けた思いがあったと思います。だから主人公が Guardian になるのではなく「人々を助けることができるネズミ」という終わりかたのほうがいいと思いました。 だから最初は、「Spirit Guardian だからネズミより凄い」ではなく、Guardian には Guardian だからできることがありネズミにはネズミだからできることがある、という感覚の中でストーリーを最後まで進めてほしかったなと思いました。 ただ、その考えかたは「ネズミ自身がどう思っているか」という点が抜けていて自分勝手です。でも、このゲームはネズミが Spirit Guardian になるかどうかをプレイヤーに選ばせたうえで、必ず Guardian になるようになっています。そして私は、プレイヤーに選ばせるのだから私の返事は主人公であるネズミの返事だと考えています。そして私は Guardian になることを断りました。 これがもしプレイヤーに選ばせるということをせずに、ネズミ自身によって返事をさせていたなら、「Guardian になれたね、良かったね」と素直に祝福できたのになと思いました。 しかしここまで考えてようやく気付いたのですが、主人公が不思議な電気の力を手に入れた時点で、もはやネズミではなかったのかもしれません。ネズミだけどネズミではない誰か。それは宙ぶらりんな状態とも言えるので、周りからの理解を得られるかどうかという問題があります。 やはり Spirit Guardian として生きるのが良かったのでしょうか。

私は次こそはネコになろうと思っていたのですが、なぜかネズミになってしまいました。 このゲームのとてもゆっくりとしたゲームプレイは、退屈だと感じてしまう人もいるはずです。ですが、それが気にならない人なら、Kibblinたちとおしゃべりして町のあちこちに足を運ぶという一夜の不思議なできごとは、とても心地よいナラティブになると思います。