Yellow Taxi Goes Vroom
- Steam
- 2024年4月10日
3Dのアクションで、とても愉快なゲームです。 ジャンプではなく車の走行を制御するというもので、それに慣れるまでは難しいかもしれません。また、コレクタソンと呼ばれるスタイルを要求されるので、そこを楽しめるかどうかは重要です。 トスラ社は謎のギアのエネルギーを利用してオイルを汚染している。それを止められるクルマはゼンマイを動力源とする主人公のタクシーだけだ。 だからタクシーは謎のギアを回収しトスラ本社を目指す。
エリアはアンロック制となっていて、各エリアには拠点となるラボにあるポータルから行けます。それらのポータルを起動するには決まった数のギアが必要で、そのギアを集めるのがゲームプレイの中心となります。 タクシーのアクションはアクセルとブレーキ、フリップ・オ・ウィルというダッシュ、そしてダッシュのキャンセルによるジャンプの3つです。ジャンプは自由に行えるようなものではなく、あくまでも他の2つのアクションと組み合わせて使用するという感じになります。 各マップにはギアだけでなくコインも配置されていて、そのコインで帽子を購入できます。また、同じマップで物を50個破壊すると破壊ボーナスとしてコインを獲得できます。 地面や足場のないところに落ちるとミスになり30コインを失いますが、コインがゼロになってもゲームオーバーにはなりません。
ゲームプレイですが、プレイ時間はアクションが得意かどうかで変わりますが、とりあえずのクリアが8時間ほどかなと思います。ギアのコンプリートを目指すと12時間以上になると思います。 プレイスタイルはコレクタソンと呼ばれるアイテム集めになりますが、各マップ内の行動は自由で、好きに楽しめばいいという作りになっています。ひとつのマップ内で好きなだけギアを集めて回ってもいいし、さっさと次のエリアに向かってもいいです。再終盤のエリアを除いて、マップをクリアするというルールは採用していません。 この好きに楽しめばいいという調整は他にもあって、何かにぶつかろうが高所から落ちようが誰かを吹き飛ばそうが気にする必要はないです。一部のマップではゼンマイが止まらないように注意しなければならないのですが、その場合でも、とにかく走らせていればなんとかなるように作られています。 そうしたミスの要素を極力排除した作りは、タクシーを走らせるという楽しみを決して邪魔せず、アイテムを集めるというプレイスタイルを正しく推奨できていると思います。
自由で、そしてミスを恐れることがないように作られていますが、それでもアクションについてはしっかりと難易度調整されていて挑戦のしがいがあります。アレは無理かもと思いながらもリトライを繰り返してギアを入手したときや、どうすればいいのか分からないけどとりあえずやってみたことが上手くいったときなどは本当に嬉しいです。 難易度の調整以外でもプレイヤーの興味と興奮を維持させるような工夫がされていて、そのひとつに過去のゲームのオマージュがあります。ラボ内の割と序盤で行ける場所に「サイコタクシー」というゲームの箇体があるのですが、これが完全に「クライジータクシー」で、乗客を拾って目的地に運ぶというゲームプレイです。しかもこれ、サウンドトラックには収録されていない謎の曲が流れます。すごく気になります。 サイコタクシーは最初はプレイできないのですが、「アーケードパニック」というエリアでそのゲームのカートリッジを入手すると実際にプレイできるようになります。
音楽はプレイ前に想像していたよりもずっと多彩でビックリしました。 ビデオゲームらしいアップテンポでゴリゴリのシンセティックなサウンドを聴かせるんだろうなと思っていたのですが、各エリアや状況に合わせたアコースティックな劇半も多いです。 ゲームプレイの入口とも言えるエリアでは、スティール・パンによるトロピカルなエレベーター・ミュージック的な曲でウェルカム感を出していて、これがプレイヤーの気負いをやわらげています。そのあとゲームに慣れてきたころに急かす感じを出してはきますが、やはり明るい雰囲気の曲で気楽なゲームプレイを推奨します。いよいよ操作が上達したころに行くことになるマウリツィオの街というエリアでは、オフビートのベースを4つずつ淡々と鳴らすアップテンポな曲でスピードラン的なスタイルを促します。 しかし一転、悪役であるトスラ社関連のエリアでは管弦やコーラスによる曲で圧迫感を出し、そしてステージクリア型の難関であるトスラ本社に突入すると、バイオリンとホルンのメロディによるドラマティックな曲が流れ、最終局面を演出します。 そういった対比によって、プレイヤーに愉快さと緊張感を行き来させることができていると思います。 好きな曲は最終エリアで流れる「Weightless」。ネタバレになるので詳しい状況は書けませんが、このピアノのソロは、少しの不気味さと少しの郷愁とが入り混じる印象的な曲です。でもその感覚は間違いなくそれまでのプレイ体験が影響していて、サウンドトラックではなくゲーム内で聴いたからこその印象だと思います。さらにこのエリアではゲーム音が極端なカットオフによってこもった音になっていて、クリアなピアノのサウンドとの対比がとても印象的でした。
今から約30年前、「スーパーマリオ64」がステージ解放型の3Dアクションとコレクタソンというプレイスタイルの相性の良さをすでに示していました。2017年に「A Hat in Time」がそれを踏襲し、2022年には「Togges」がパズルのシステムでそれを実践しました。 そしてこの「Yellow Taxi Goes Vroom」は、その簡素だけれども確かなアクションのメカニクスと難易度調整を伴って、ステージクリアを意識させないほぼ完全なコレクタソンを実現したと思います。 2025年の今年は「Demon Tides(日本語未対応)」が、オープンワールドと3Dプラットフォーマーという組み合わせで3Dアクションのコミュニティに殴り込みをかける予定となっています。もちろんどのような体験になるかはプレイしないと分からないですが、Yellow Taxi が提案している "サンドボックス的なコレクタソンの3Dアクション" が盛り上がってくれないかなと期待しています。